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地域を活性化させるデザインインダストリアルデザイナー・水戸岡鋭治さん

2013年8月2日金曜日

今、九州の列車がアツい!!

突然ですが、九州には多くの観光列車があることをご存知ですか?
最近、ななつ星というリゾート寝台列車が話題になっていますが、九州には他にも多くの観光列車があります。

ここ宮崎にも「海幸・山幸」という観光列車が走っています。
最初、この列車を見たとき宮崎にこんなに粋なデザインの電車あったのかと!!デザインはだれがされているんだろう??と興奮しました。
外観のモダンなかっこよさもさることながら、室内空間の快適さ、宮崎特産の飫肥杉を使用するこだわり、全てが乗客を中心に設計されているデザインに衝撃を受けました。

そんなJR九州の観光列車を手がけられているのが著名なインダストリアルデザイナーの水戸岡鋭治さんです。ここでは、水戸岡さんの「海幸・山幸」のデザイン設計時のエピソードを紹介させていただきます。

日南線の観光特急「海幸山幸」は、南九州が舞台とされている日向神話(日本神話)の山幸彦と海幸彦に由来し、そのコンセプトは「木のおもちゃのようなリゾート列車」。日南市の特産の「飫肥杉」をふんだんに使用した、文字どおり「木の列車」だが、水戸岡は内装だけではなく、メンテナンスが難しい外装にも本物の木を使用することを主張したのだ。

車両の専門家たちからは、「車両に木を張り付けて大丈夫なのか?」「木はすぐに腐食するから、車両管理が難しい」など、不安の声が多く上がった。

利用者の視線に立つ水戸岡にすれば、当然、「メンテナンスが大変というのは、仕事が面倒という怠慢」となる。 「お客様の立場なら、本物の木の温もりや香りを感じられる列車のほうが楽しいと思う。特に子供たちには、本物の木に触れてもらいたい。子供は理屈ではなく、五感で上質なものを感じ取る力があり、幼い頃から本物に触れることは感性を育てる上でも貴重な体験となります。色褪せて腐るのが自然の木、木目プリントやプラスティックを使ったのでは意味がない」  

この水戸岡の主張を聞き入れ、社内に少なからずあった不安の声を抑えて「やってみよう」と英断を下したのは、当時社長であった石原進であった。 「車両は大切な商売道具ですし、火災を起こしては大変ですから、国鉄時代から『燃えやすい木材は列車には使えない』という不文律がありました。社内でも難色を示す社員が少なくありませんでしたが、水戸岡さんは、『燃えないように加工した木を使えばいい』と譲りませんから(笑)。私も、面白そうだし、木が腐ったら張り替えればいいと、思い切って決断したんです」

参照元:http://goethe.nikkei.co.jp/human/110915/index.html

デザインには仕事を依頼するクライアントがいて、それを利用するお客様がいます。
デザイナーはクライアントにお金をもらってデザインしているため、どうしてもクライアントの言われるままになってしまうことが往々にしてあると思います。
でも水戸岡さんは絶対にそれをしない。利用者目線で考え抜いて、 確かなデザイン理論からクライアントと戦い、最終的にはクライアントを味方にし、JR九州の観光列車を今では全国の鉄道会社に羨まれる地位にまで持ち上げました。

水戸岡さんはこのようにおっしゃっています。

人をワクワクさせるデザインの力を信じる
迷い、悩み、迷い、完成するまで手を加える。そうして手間暇をかけ、一生懸命作ったデザインには、心から人を感動させる力が宿るものだ

※特急 A列車で行こうの車内

デザイナーとクライアントが共通の大目的にたつ

国鉄から分割民営化されたJR九州は、鉄道事業だけでは経営が成り立たない。さらに、国鉄時代の“役人根性”が染みついた多くの社員には、民間企業のようなサービス精神が欠けていた。

そんなJR九州の意識改革を行ったのが、初代社長の石井幸孝と石原の前任の田中浩二である。また、水戸岡を起用し、特急「つばめ」「ソニック」「かもめ」などにより、“デザインの力”を社員たちに認識させたのも両社長であった。

 こうしたJR九州の改革を間近で見てきた石原は、地域とともに発展する鉄道会社を目指すようになる。 「九州に首都圏のような人口はいませんし、鉄道事業は赤字でも仕方ありません。だからといって赤字路線を廃止すれば、地域経済はどんどん疲弊してしまいます。そこで、赤字路線をもっと上手に活用し、リニューアルした博多駅や関連事業との相乗効果で収益を上げ、地域の活性化を図るようにしたのです」  現在、JR九州には34のグループ会社があるが、鉄道運輸収入は全体の3割弱しかない。鉄道事業者としては赤字路線を切りたいところだが、そこを耐え、楽しい列車を作り、九州全域に人が足を運ぶように努力する。石原は、そういう使命にも似た戦略を取っているのだ。

 こうした石原の考え、JR九州のDNAが如実に表れているのが、水戸岡デザインによるユニークで魅力ある列車である。 「『SL人吉』は4億円もかかっていますから、黒字にはなりませんが、『SL人吉』目当てに新幹線で熊本まで足を運ぶ人が増え、人吉地区の温泉も大盛況です」(石原)
 個別の路線で採算を考えず、九州全体の発展や活性化を考えるという点において、水戸岡も石原と同じ考えを持つ。だが、水戸岡には、それではまだ不十分と感じている部分もある。

「どれだけ『SL人吉』の評判がよくても、列車が魅力的というだけでは、地域は真に活性化しません。列車に見合ったホームや駅、駅前広場、駅周辺の街並み、その地域に暮らす人の意識、取り巻く環境すべてを変えていかないとだめなんです」  地域の人が心から誇りに思えるような環境が整えば、地元が元気になり、もっとよくしたいという意識も生まれてくる。そうした変化なくしては、どんなに立派な施設や楽しい列車を作っても、それはお仕着せの箱物行政と大差ない。水戸岡には、そんな想いがあるようだ。

参照元:http://goethe.nikkei.co.jp/human/110915/index.html

観光列車をデザインされるうえで、 「いい空間は、いいお客様を生むものなんです。丁寧に扱わなければという気づかいがマナーとなり、様式美が生まれます。頑丈に作られ、機能性ばかりを重視した列車では、そういう気配りは生まれませんから、当然、お客様のマナーも低下していきます。ただ豪華なのではなく、旅の質も考えたいですね」とおっしゃっています。

デザインが人の意識までも変えていく。
利用者にとことんスポットを当てなければ出てこない発想だと思いますし、人間の善の部分を信じぬかれている姿勢に感銘を受けました。

そんな徹底した仕事ぶりにJR九州の石原社長も全幅の信頼を寄せています。 上記の言葉をお借りすれば”いい仕事はいいクライアントを生む”ということでしょうか。デザイナーとクライアントが地域を活性化させるという大目的にたってこそJR九州の躍進があったと思いますし、長期的に考えたときに九州の発展がひいては会社の発展につながると信じて仕事されている姿勢は素晴らしいです。

東京で働く知り合いから突然「海幸・山幸」って乗ったことある?内装は?写真送って!と連絡がきたことがありました。九州には水戸岡先生のデザインした列車がたくさん走っていて、それに触れられることが羨ましいと言ってました。それを聞いて「九州・宮崎すごいやろ!!」と誇らしい気持ちになったのを覚えています。

まとめ

地域を活性化させるのは簡単なことではないですが、いいものを作ることが少しづつ地域を良くすることは間違いないですし、それしか方法はないと思います。 いいものが人の意識をすこしづつ変えていく。それを信じてデザイナーは仕事をしていかなればいけないと改めて思いました。 まだ海幸・山幸しか乗ったことがないので、次回は「SL人吉」に乗ってみようと思います。

九州の観光列車については、ぜひ下記HPをご覧下さい。
電車好きではなくとも、わくわくしてくると思います。
※クリックしたら小一時間は見ちゃうことを了承のうえご覧下さいw
JR KHUSHU TRAINS

参照元の記事
http://goethe.nikkei.co.jp/human/110915/index.html

水戸岡さんの仕事はNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも紹介されていますのでぜひご覧下さい。
http://www.nhk.or.jp/professional/2011/0404/

他にも”吊り輪を円形にする”ことで通勤電車を快適に
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sugiyamajunichi/20130418-00024472/